2018年1月22日月曜日

秩父宮にトランペットが鳴り響いた日

以前にも書きましたが、自分は9年前、山梨のサントリー戦を客として見に行った時にリコー応援団の方から声をかけられて、「面白そうだからやっちゃう!」と答えたことで今のコールリーダーという立場の人間になりました。

その経緯を人に話すと、必ず聞かれるのが「なんでいきなり任されて、すぐに応援リードができたんですか?」ということです。

たしかに冷静に考えれば「すげえ無茶ぶりだな! リコー応援団!!」と今となっては思ってしまいますよ、自分も(笑)

ではその質問に答えましょう。それは
「この人の応援が刷り込まれていたから!」

ということで、その人について語るべく、もうその存在を忘れかけられているブログを久々に更新してみむとしてするなり、なのであります。




あれは2000年をちょっと過ぎたころでしょうか。夏休みに地元・千葉で高校時代のラグビー部同期と昼からサッポロビール工場でしこたま飲んで、二次会は野球見ながらまたビール飲むぜ!とへべれけになって移動したマリンスタジアム。そこでアタスは、チームの千葉移転時以来、約10年ぶりにロッテの試合を見て、ライトスタンドの盛り上がりっぷりに圧倒されたのです。やべえ! ロッテの応援、おもしれえじゃん!!

そこから通いましたよ、マリンスタジアム。当時は都内で一人暮らしをしていたのですが、週末の三連戦となれば金曜日は仕事を早めに切り上げスタジアムに直行。いちいち帰るのめんどくさいので実家に二泊しちゃったりして。当時のロッテは三回行って一回勝てば御の字といったチームではありましたが、正直勝ち負けよりも自分が応援した選手が活躍する喜びのほうが強かったんです。応援歌やコールを覚えてギャーっと騒いで、点が入ればとなりの知らないオッサンや小学生とハイタッチして。とにかくあのスタンドの雰囲気が自分には心地よかったのです。

それを壇上でリードしていたのが、今回のコラムの主役、ジントシオさんその人。アフロ姿で自分でトランペットも吹きつつ、攻撃の前にはどんなにボコボコに負けていてもポジティブな一言に続いての「ファイティーン!!」 あのテンポ、あのリズム、あのユーモア。それが自分にとってのスポーツ応援の原点だったのであります。


で、時代はワープし、コールリーダーを安請け合いした2009年の山梨へ戻ります。さて、引き受けたはいいものの、実際どうやりゃいいんだろ、と思ったときにアタスの頭に浮かんだのが、あのマリンスタジアムの光景。あれをここに持って来ればいいじゃん!と思ったんですね。難しいことをやるんじゃなくて、スクラム押してほしいときに「押せ!」、ここは点取ってほしいというときに「行け!」って言って、本当に押せたり行けたりしたら嬉しいし楽しいじゃん!と。

その日の試合相手は強豪・サントリーだったのですが、ものすごくチームは頑張り、あわやの展開をみせます。スタジアムを覆う「リコー行けるんじゃね?」「ひょっとして勝っちゃうんじゃね?」そんな空気の中、ビギナーズラックもあったと思いますが、自分のはじめての応援リードは冴え渡りました。試合は惜しくも敗れてしまったのですが、その帰りに応援団の人にほうとうをご馳走になりながら称賛の嵐を受け、ついついいい気分になった自分は「じゃあ来週もやっちゃう!」
そこから、以後9年にわたってコールリーダー生活が続いているのですから、まさに豚もおだてりゃなんとやら。


さて、また時間は一気に飛びまして2017年夏。毎年恒例となった網走での夏合宿に出かけるころに、自分のツイッター画面に突然、その見慣れた名前の人からのフォロー通知が来まして。もちろん以前からジンさんのアカウントはフォローしていて、ロッテ応援団以降のいろんなスポーツの分野での活躍も知っていたのですが、自分は特にコメントを入れた記憶もなかったので当初は「えっ? なんでだろ?」と思っていただけでした。すると数日後、自分が旅行中にアップしたしょうもないツイートにも「いいね!」が付くようになりまして。いやいやすごいことになったな、と自分は独り北海道の地で興奮しておりました。

で、旅から帰ってくるなり、なんかメッセージ来てるじゃないですか! なになに……「ラグビーにも興味があるので観戦したい?」ぜひ来て来てー!!ということであれよあれよという間に直接お会いすることになったのです。アタスの人生、つくづく急展開ですな。

初対面はワールドカップ2年前のイベントが行われる国際フォーラムでした。ここで辻仁成なら「やっと会えたね」なんてことをサラリと言えるのでしょうが、四十近いシャイなおじさん同士の初対面でそんなこと言うのも気持ち悪い。挨拶もそこそこにとりあえず有楽町のガード下で飲みましょう!ということになりまして。どうやらジンさんは「ラグビートップリーグで1チームだけおかしな応援をしている」という噂を聞きつけて興味を持ち、コンタクトを取ってみたとのこと。

こちらとしては如何に自分がジンチルドレンであるかということを(実際は自分のほうが年上だったと聞いて驚愕)、見よう見真似の自己流ラグビー応援で9シーズンやってきたということ、そして野球やサッカーだけでなく、ラグビーもなんとか盛り上げたいんです!ということを熱く語るうちに時間はあっという間に過ぎてしまいました。

そしてお開きとなる時間に、ジンさんからまさかの申し出があったのです。「今度、トランペット持って秩父宮行きますよ!」


でもですね、その申し出を受けて、まず自分は思いましたよ。初めて太鼓を使ったときに自分に返ってきたネガティブ方面の反応を考えると……これは根回しするしかない!
ということで、まずはチーム関係者に相談。協会関係者に話を通していただいたうえで、さらには「いかに試合進行を妨げない形でやるか」ということを猛アピール。ご尽力いただいた方にはこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。

そうした経緯から実現した、9/29(NEC戦)、12/2(ドコモ戦)の二回にわたる、ラグビー界初となるトランペット応援@秩父宮。

で、やってみてどうだったか? とにかく反響がスゴかった!

「ラグビー場じゃないみたいだった!」「スタジアムの外にも応援の音が聞こえてきて、嬉しかった」……これらは実際に僕がブラックラムズの選手やスタッフから聞いた感想の一部です。
さらには「メインスタンド側でいつもは聞くだけだったけど、つい歌っちゃった」といったファンの方からの報告や「次はいつやるの? 絶対行く!」といった問い合わせも多数いただきました。

当初、ツイッターで事前に告知したタイミングでは「ラグビーに鳴り物?」的なツイートもいくつか散見されましたが、試合後にチェックした限りでは多くの方がポジティブな感想を持ってもらえたようですね。現場でもジンさんがラグビーの競技特性に理解とリスペクトをもって実施してくれた結果、少なくとも競技の邪魔になるようなことはなかったと思いますし、いつにも増してスタンドの一体感のある盛り上がりはスゴかったということは自信をもって言えます。それは最前列にいる自分が一番実感できますから。

なにより、自分が嬉しかったのは試合後に多くの方からいただいた「今日の応援、すごく楽しかったよ」という言葉でした。手前味噌ではありますがこのチャレンジ、なにかとマナーやルールばかりが強調されがちなラグビー応援という狭い世界において、「本当に“応援”楽しめてます?」「こんな方法だってアリじゃないですか?」という一石を投じることができたのではないかと思います。


自分にとっても、この出来事は非常にエポックメイキングなものになりました。何と言ってもあの「ジン団長」と一緒に応援をする日が来るとは! 今やモノマネ番組の定番手法ですが、口をひん曲げてふざけまくるコロッケの背後に美川憲一が出てきた、あの最初の本人登場の時の衝撃と言えばわかりやすいでしょうか? それぐらいのインパクトが自分にはあったのです。

そして、そのころの自分には、周りの反応を気にしてか、ちょっと応援がパターン化してきちゃったという自覚があったんですよ。どうしてもプレーの切れ間の短い時間でやれることは限られてきちゃうワケで。でも、最初に会った時にジンさんは言ってくれました。「いろんな声はあっても、自分がやりたいことをやればいいんですよ!」
この言葉に自分は強く励まされ、数万の味方を得たような気になりましたよ。実際、この2試合以降、ブラックラムズの応援は変わったと思います。一言で言えば「よりアグレッシブ」に。そのきっかけを与えてくれたという意味でもジンさんには重ねて感謝しなければなりません。

ジンさん、本当にありがとうございました!



昨年末、ジンさんはご自身のツイッターで、来季は東北楽天ゴールデンイーグルスの球団所属の応援スタッフとして活動されることを発表しました。自分はそのツイートを東芝グラウンドで行われる練習試合に向かう武蔵野線車内で見て、思わず「ジンさんスゲエ!!」と声に出してしまいました。

これは、これまでのジンさんの競技を超えたさまざまなスポーツでの応援活動が評価された結果であるということで、素晴らしいことです。一方、かつて団長を務めたチームのライバル球団への「移籍」は非常に勇気の要る決断でもあったとも思います。自分もマリーンズファンの一人ではありますしね。

でも、1パリーグファンとしては「ジントシオがまた球場に帰ってくる」という事がとにかく嬉しくてたまりません。その姿見たさに、今年はきっと、以前に近いペースでまた足しげく球場に通うことになるのでしょう。

そして自分も、今回の発表に大いに刺激を受けました。競技は違えど、スポーツ界全体を一緒に盛り上げていけるよう、どんどんチャレンジしていきますよ。ラグビーの応援、全然まだまだだと僕も思っていますんで。


それでは最後に、尊敬する映像監督・カンパニー松尾先生の名作「テレクラキャノンボール2013」のキャッチフレーズを一部アレンジしたこの言葉を、東北の地で新たなビッグチャレンジを始める戦友に贈りたいと思います。

KEEP ON FIGHTING,
KEEP ON CHEERING.

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